私はリフォームの営業・現場監督として、これまで多くのトイレリフォームを担当してきましたが、その中でも「タンクレスにして良かった」と満足度が高いケースは、ある程度パターンが決まっています。
見た目がすっきりして、掃除もしやすく、トイレ空間の印象がガラッと変わる。
タンクレスが人気なのは、現場に立っていても本当によく分かります。
実際、「次に替えるならまたタンクレスがいい」と言われることも少なくありません。
ただし一口にタンクレスといっても、
メーカーやシリーズによって特徴・価格帯・向いている家庭はかなり違います。
「一番高いもの=一番満足できる」というわけではないのが、難しいところなんです。
この記事では、私自身が現場で提案することが多い
“おすすめできるタンクレストイレ”を中心に、
選び方の考え方や注意点もあわせて解説していきます。
「どれを選べばいいか分からない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. トイレのタンクレスとは?まず知っておきたい基本
タンクレストイレとは、便器の背面に貯水タンクを持たない構造のトイレです。 一般的なタンク付きトイレは、一度タンクに水を溜めてから一気に流しますが、タンクレスは水道直結で必要な水量を制御しながら洗浄します。
その構造上、次のような特徴があります。
- 便器背面が低く、圧迫感が出にくい
- タンクがなく凹凸が少ないため、掃除がしやすい(清掃面積も少ない)
- 手洗い器や収納とのレイアウト自由度が高い
最近は、除菌水・自動洗浄・フチなし形状など、「清潔さ」と「ラクさ」を重視した機能が進化しています。
共働き世帯や子育て世帯から支持が高いのも、こういった背景があるんです。
2. トイレをタンクレスにするメリット・デメリット(リスク含む)
タンクレスは、条件が合えば満足度がとても高い設備です。 ただ、すべての住宅・すべてのご家庭に万能というわけではありません。 ここでは現場でよく感じる「良かった点」と「事前に知っておいてほしい点」を整理します。
2-1. タンクレスのメリット
タンクレスのメリットは、見た目だけでなく毎日の使い勝手と掃除のしやすさに直結する点にあります。
メリット
- 見た目がすっきり:
便器背面が低く、トイレ空間が広く感じやすいです。 - 掃除の手間が減る:
タンク周りの凹凸がなく、拭ける面が増えてラクになりやすいです。 - 節水しやすい:
洗浄水量を電子制御する機種が多く、必要な水だけ使う設計になりやすいです。 - 清潔機能が強い:
除菌・汚れ防止など、掃除回数を減らす方向の機能が充実しています。
タンクレスは洗浄水量を細かく制御できるため、従来の組み合わせトイレより「必要な水だけを使う設計」になっている機種が多いです。結果的に節水につながりやすいのが特徴です。
また、自動洗浄や自動開閉自体はタンク付きでも選べますが、タンクレスはLIXILの泡クッション、TOTOの除菌水・便座きれいなど、「汚れをつきにくくして、掃除回数を減らす」方向に強い機種が多い印象です。
特に「掃除のしやすさ」と「見た目のスッキリ感」は、使って年数が経つほど差を実感しやすいポイントです。
2-2. タンクレスのデメリット・リスク
一方で、タンクレスならではの注意点もあります。 ここを理解せずに選ぶと、後悔につながりやすくなります。
デメリット
- 本体価格が高め:
機能が充実するほど価格が上がり、予算オーバーになりやすいです。 - 修理費が読みづらい:
電子部品が多く、症状によっては部分修理が難しいことがあります。 - 住宅条件に左右される:
水圧・配管の影響を受けやすく、事前確認が必須です。
水圧の影響を受けやすい
タンクレスは水道直結のため、水圧が不足すると洗浄性能に影響が出ます。 特に注意が必要なのは次のようなケースです。
- 戸建ての2階・3階トイレ
- マンションの高層階
- 築年数が古く配管が細い住宅
「他の水栓が弱い」「シャワーの勢いが安定しない」など心当たりがある場合は、最初に確認しておくと安心です。
タンクレスは水圧が足りないと選べない(もしくは追加対策が必要)ケースがあります。
現場では、カタログだけで決めずに事前に水圧・配管条件を確認してから機種を絞るのが基本です。
将来の修理・部品供給の考え方
タンクレスは電子部品が多く使われています。 そのため使用年数が進むと、部分修理ができず本体交換になるケースがあります。
特に15~20年以上たつと、部品が廃盤になってしまうからです。
- 便座だけ交換できない
- 便器+機能部をまとめて交換になる
長期的には「家電に近い設備」と考えて、将来の交換も想定しておくと安心です。
手洗い計画を別で考える必要がある
タンクレスでは、タンク上の手洗いが使えません。 そのため次の選択が必要になります。
- トイレ内に別置き手洗い器を設ける
- 洗面所で手を洗う動線にする
家族構成や来客頻度によって正解は変わるので、ここは先にイメージしておくのがおすすめです。
3. トイレのタンクレスの値段相場はどれくらい?
タンクレストイレの費用は、 本体価格+基本工事費+条件別工事 の合計で考える必要があります。
- 本体価格:タンク付きより高め
- 工事費:内容次第で差が出やすい
- 手洗い・配管調整で総額が変わる
現場で多い目安としては、次のようなイメージです。
費用の目安
タンクレストイレ本体:25〜45万円前後
標準的な交換工事込み:30〜55万円前後
手洗い新設あり:+5〜15万円程度
「思ったより高い」と感じる方も多いですが、タンクレスは見た目・掃除・満足度に直結しやすい設備です。
そのため“安く済ませる”より“後悔しない”という視点で考えるのがおすすめです。 私はリフォームの営業・現場監督としてトイレ工事も数多く担当してきましたが、毎回強く感じるのは—— 「トイレリフォームの満足度は、“費用の全体像”を先に知っているかで決まる」 ということです。 「いくらかかるの?」「追加費用って出るの?」「何を選ぶと高くなるの?」 初めての方ほど不 ...
トイレに関して費用をまとめて記事もご参照ください。

参考【トイレリフォーム費用まとめ】相場から設備別概算まで一気に解説
4. トイレのタンクレスを安くする方法はある?
トイレリフォームの費用は、工事費よりも商品本体の価格が占める割合が大きいケースがほとんどです。
一般的なトイレ交換であれば、工事内容はどのトイレや手洗い器でも大きく変わらないため、総額の差は「どの商品を選ぶか」によって生まれます。
そのため、費用を抑えたい場合は、なるべく価格帯が抑えめのメーカーやシリーズを選ぶことがもっとも現実的な方法になります。
本体価格を抑えやすいトイレの選び方
タンクレスの中でも価格が比較的抑えやすいシリーズ例を紹介します。
- Panasonic アラウーノ S160シリーズ
有機ガラス系の独自素材で汚れに強く、価格も抑えめのラインです。必要な機能を備えつつ、比較的コストを抑えた選び方ができます。 - TOTO GGAシリーズ
TOTOのウォシュレット一体形便器。見た目はタンクレスに近いですが、実はタンク内蔵の「タンクレス風」便器です。条件によっては抑えた価格で選びやすい選択肢になります。
※画像出典:Panasonic公式HP「アラウーノS160シリーズ」
TOTOレストルームカタログ
「完全なタンクレス」にこだわらず、見た目・実用性・コスパのバランスで選ぶことが大切です。
使わない機能を削るだけで差が出る
現場で特に費用差が出やすいのは、機能の取捨選択です。
たとえば…
- フタや便座の自動開閉
- 温風乾燥
- 高性能な清潔機能
同じシリーズでも、上記のような機能が不要な場合はグレードダウンしていけば数万円変わってきます。
手洗い器の種類で金額と雰囲気を調整
タンクレスで手洗いを別に設ける場合、選び方次第で費用感が変わることがあります。
- LIXIL サティスSタイプ 手洗器付
サティス本体に手洗いカウンターが付いたタイプ。スペースを有効活用しながらコストを抑えやすい構成です。:contentReference[oaicite:2]{index=2} - Panasonic アラウーノ用 コーナー型手洗い
トイレ空間の角を有効活用しやすく、狭いトイレでも設置しやすい手洗いカウンターです。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
コーナー型などコンパクトな手洗いは、狭いトイレに向いていますが、
使い勝手やデザイン面が好みかを先に確認するのがおすすめです。
安くする=削るだけではなく、「何を残すか」「どこで満足感を維持するか」を見極めることが、後悔しない選び方になります。
5. タンクレスの手洗いはどうする?後悔しやすいポイント
タンクレスで一番後悔が出やすいのが、手洗いの考え方です。
タンク上の手洗いが使えなくなるため、
タンクレスでは事前に「手洗いをどうするか」を必ず決めておく必要があります。
基本的な選択肢は、大きく次の2つです。
- トイレ内に手洗いを設ける(給排水一体型・別設手洗い器など)
- 洗面所で手を洗う動線にする
ここで大切なのは、誰が・いつ・どこで手を洗うかを、暮らしの中で具体的に想像することです。
ポイント
- 来客が多い → トイレ内に手洗いがあると安心
- 家族中心 → 洗面所手洗いでも問題ないケースが多い
- 子ども・高齢者がいる → 動線の短さが重要
タンクレスは、手洗い計画とセットで考えるのが鉄則です。
手洗い器のそれぞれの違いや、「どのタイプがどんな家庭に向いているか」は、
下記の別記事で詳しく解説しています。
トイレリフォームの手洗い完全ガイド|種類・選び方・後悔しないポイント(作成中)
6. どのメーカーのタンクレストイレがおすすめ?
タンクレス選びで大切なのは、“有名だから”ではなく“何を重視するか”です。
現在、日本のトイレ市場は
- TOTO「ネオレスト」
- LIXIL「サティス」
- Panasonic「アラウーノ(L150・S160)」
この3社がほぼ独占しており、タンクレスも実質この中から選ぶケースが大半になります。
同じタンクレスでも、メーカーごとに
考え方・強み・向いている家庭ははっきり分かれます。
掃除のしやすさ重視なら|TOTO
便器そのものに高級感があり、「長く使ってもキレイを保ちたい」という方から根強い支持があります。
キレイ除菌水の噴霧や、使用前に便器を湿らせる便器きれい、便座裏の汚れを落とす便座きれいなど、「汚れを落とす前に、付けにくくする」という考え方が一貫しているのが大きな特徴です。
デザインとバランス重視なら|LIXIL
便座リフトアップや泡クッションなど、TOTOにはない差別化された独自機能が多く、日常で「これ、意外と助かる」と感じやすい工夫が随所にあります。
価格面でも、条件次第ではTOTOより抑えやすいケースが多い印象です。
最近では、洗濯機のように便器を洗う泡クリーンといった新しい清掃機能も登場しています。
コスパと素材重視なら|Panasonic(アラウーノ)
フタのカラーバリエーションが豊富で、デザイン性も個性的です。
中性洗剤を補充することで泡クッションによるハネガードなど、独自の汚れ防止機能があり、立って使うことが多い男性がいるご家庭との相性が良いのも特徴です。
比較的コストを抑えやすい点も選ばれる理由のひとつです。
どのメーカーが正解かは、家族構成・掃除の考え方・予算・使い方によって変わります。
それぞれのメーカーの違いをもう少し詳しく知りたい方は、別記事でメーカーごとの考え方や向いている人を整理しています。
トイレメーカーの違いを徹底比較|TOTO・LIXIL・Panasonicは何が違う?(作成中)
7. まとめ|トイレのタンクレスは“憧れ”と“現実”のバランスが大事
タンクレスは、 トイレ空間の満足度を大きく高めてくれる設備です。
一方で、水圧・手洗い・将来の交換
といった現実面を整理しておかないと、後悔につながります。
条件が合えば、タンクレスは非常におすすめできる選択肢です。
「憧れ」だけでなく、今の暮らし・これからの暮らしに合っているか。
そこまで一緒に考えることが、満足度の高いトイレリフォームにつながります。

